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「こころ」ノート2の5

 投稿者:  投稿日:2001年 3月10日(土)01時43分5秒
  47 「どんなに先生を誤解なさるんですか」
 先生は私のこの問いに答えようとはしなかった。
「妻が考えているような人間なら、私だってこんなに苦しんでいやしない」//
妻の誤解について。

49 私はその後も長い間この「妻君のために」という言葉を忘れなかった。//

56 奥さんの語気には非常に同情があった。それでも口元だけには微笑が見えた。外側からいえば、私の方がむしろ真面目だった。//

57 「奥さんは「本当いうと合の子なんですよ」といった//奥さんの二重性

58 「ところが先生は全く方角違いの新潟県人であった。//kもそうだ。

58 しかし薄赤い顔をした奥さんはそれより以上の話をしたくないようだったので、私の方でも深くは聞かずにおいた。//まあ話すに躊躇うことはそれほどないはずだが。

59 「先生は美しい恋愛の裏に、恐ろしい悲劇を持っていた。そうしてその悲劇のどんなに先生にとって見惨なものであるかは相手の奥さんにまるで知れていなかった。奥さんは今でもそれを知らずにいる。//はたして奥さんは先生の「恐ろしい悲劇」を本当に知らずにいるのか?

62 しかし……しかし君、恋は罪悪ですよ。解っていますか」//

63 「あなたの心はとっくの昔からすでに恋で動いているじゃありませんか」//この辺はよく考えなくてはならない。

65 ――君、黒い長い髪で縛られた時の心持を知っていますか」//そうすると「黒い長い髪で縛」ったのは奥さんだが。

67 とにかく恋は罪悪ですよ、よござんすか。そうして神聖なものですよ」//

69 「その庭に、この間まで重そうな赤い強い色をぽたぽた点じていた椿の花はもう一つも見えなかった。//「赤い強い色をぽたぽた点じていた椿の花」は血を思い出させる。

69 「その時生垣の向うで金魚売りらしい声がした。//「金魚売り」

70 「「いや考えたんじゃない。やったんです。やった後で驚いたんです。そうして非常に怖くなったんです」//「やったんです。やった後で驚いたんです。」


70~ すると襖の陰で「あなた、あなた」という奥さんの声が二度聞こえた。先生は二度目に「何だい」といった。奥さんは「ちょっと」と先生を次の間へ呼んだ。二人の間にどんな用事が起ったのか、私には解らなかった。//奥さんは先生の話が暴走するのを押さえた? 奥さんは知っている?
 
 

「こころ」ノート2の4

 投稿者:  投稿日:2001年 2月22日(木)03時52分50秒
  38 経験のない当時の私は、この予言の中に含まれている明白な意義さえ了解し得なかった。//

39~ 奥さんも自分の夫の所へ来る書生だからという好意で、私を遇していたらしい。だから中間に立つ先生を取り除ければ、つまり二人はばらばらになっていた。それで始めて知り合いになった時の奥さんについては、ただ美しいという外に何の感じも残っていない。//「つまり二人はばらばらになっていた。」

41 「召し上がって下さいよ。その方が淋しくなくって好いから」//奥さんもここで「淋し」いと言っている!!

42 「子供でもあると好いんですがね」と奥さんは私の方を向いていった。私は「そうですな」と答えた。//

42 「子供を持った事のないその時の私は、子供をただ蒼蝿いもののように考えていた。」//やはり語りの現在では私には子供がいるのだろうか?

42 「「貰ッ子じゃ、ねえあなた」と奥さんはまた私の方を向いた。//これについても議論があるが。

42「「子供はいつまで経ったってできっこないよ」と先生がいった。
 奥さんは黙っていた。「なぜです」と私が代りに聞いた時先生は「天罰だからさ」と、いって高く笑った。//なぜ子供はできないのか。

44 「日光へ行った時は紅葉の葉を一枚封じ込めた郵便も貰った。//この郵便は奥さんから貰ったものである。

44 座敷の方でだれかの話し声がした。よく聞くと、それが尋常の談話でなくって、どうも言逆いらしかった。//「言逆い」

47 「「どんなに先生を誤解なさるんですか」
 先生は私のこの問いに答えようとはしなかった。
「妻が考えているような人間なら、私だってこんなに苦しんでいやしない」//
妻の誤解について。
 

「こころ」ノート2の3

 投稿者:  投稿日:2001年 2月 7日(水)00時27分6秒
  25 「ここいらの地面は金色の落葉で埋まるようになります」といった。//そしてkも埋まっている。

26 「向うの方で凸凹の地面をならして新墓地を作っている男が、鍬の手を休めて私たちを見ていた。」//一体この男はなぜ私たちを見ているのか?やがては埋められる。

28~ 私は最初から先生には近づきがたい不思議があるように思っていた。それでいて、どうしても近づかなければいられないという感じが、どこかに強く働いた。こういう感じを先生に対してもっていたものは、多くの人のうちであるいは私だけかも知れない。しかしその私だけにはこの直感が後になって事実の上に証拠立てられたのだから、私は若々しいといわれても、馬鹿げていると笑われても、それを見越した自分の直覚をとにかく頼もしくまた嬉しく思っている。//

29 「けれども時として変な曇りがその顔を横切る事があった。」//なにか先生には強度の不安というか、落ち着かないものを抱えている。

30 「「先生雑司ケ谷の銀杏はもう散ってしまったでしょうか」
「まだ空坊主にはならないでしょう」//kもまた坊主頭だった。

32 「自分の妻さえまだ伴れて行った事がないのです」//一回は先生は奥さんと墓を訪れている。回数に入っていない。

33~ もし私の好奇心が幾分でも先生の心に向かって、研究的に働き掛けたなら、二人の間を繁ぐ同情の糸は、何の容赦もなくその時ふつりと切れてしまったろう。若い私は全く自分の態度を自覚していなかった。それだから尊いのかも知れないが、もし間違えて裏へ出たとしたら、どんな結果が二人の仲に落ちて来たろう。私は想像してもぞっとする。先生はそれでなくても、冷たい眼で研究されるのを絶えず恐れていたのである。//「冷たい眼で研究されるのを絶えず恐れていた」

35 先生と同郷の学生などには時たま座敷で同座する場合もあったが、彼らのいずれもは皆な私ほど先生に親しみをもっていないように見受けられた。//わたしの方が例外的なのか。

35~ 「だからあなたの来て下さる事を喜んでいます。だからなぜそうたびたび来るのかといって聞いたのです」「そりゃまたなぜです」私がこう聞き返した時、先生は何とも答えなかった。ただ私の顔を見て「あなたは幾歳ですか」といった。
この問答は私にとってすこぶる不得要領のものであったが、私はその時底まで押さずに帰ってしまった。//たしかに「この問答は私にとってすこぶる不得要領のもので」る。

36~ 「私は淋しい人間です」と先生はその晩またこの間の言葉を繰り返した。「私は淋しい人間ですが、ことによるとあなたも淋しい人間じゃないですか。私は淋しくっても年を取っているから、動かずにいられるが、若いあなたはそうは行かないのでしょう。動けるだけ動きたいのでしょう。動いて何かに打つかりたいのでしょう……」
「私はちっとも淋しくはありません」
「若いうちほど淋しいものはありません。そんならなぜあなたはそうたびたび私の宅へ来るのですか」
 ここでもこの間の言葉がまた先生の口から繰り返された。
「あなたは私に会ってもおそらくまだ淋しい気がどこかでしているでしょう。私にはあなたのためにその淋しさを根元から引き抜いて上げるだけの力がないんだから。あなたは外の方を向いて今に手を広げなければならなくなります。今に私の宅の方へは足が向かなくなります」
 先生はこういって淋しい笑い方をした。//
 

「こころ」ノート2の2

 投稿者:  投稿日:2001年 1月28日(日)23時18分16秒
  18 その時分の私は先生とよほど懇意になったつもりでいたので、先生からもう少し濃かな言葉を予期して掛ったのである。//

18~ もっと前へ進めば、私の予期するあるものが、いつか眼の前に満足に現われて来るだろうと思った。//「私の予期するあるもの」とは。

19 傷ましい先生は、自分に近づこうとする人間に、近づくほどの価値のないものだから止せという警告を与えたのである。//

20 「私は往来で学生の顔を見るたびに新しい学年に対する希望と緊張とを感じた。」
//なにか男を探しているような。

21 「すると奥さんらしい人が代って出て来た。美しい奥さんであった。」//単純に美しいとだけ言っているのだか。さて。

22~「するとその端れに見える茶店の中から先生らしい人がふいと出て来た。」//先生は茶店で誰かに会っていたというような可能性はないか?

23 「「どうして……、どうして……」先生は同じ言葉を二遍繰り返した。」//どうしてこんなに驚愕することがあるのだろうか?

23 「私の後を跟けて来たのですか。どうして……」//後を跟けられるような心当たりはあるのだろう。

24 「「誰の墓へ参りに行ったか、妻がその人の名をいいましたか」
「いいえ、そんな事は何もおっしゃいません」
「そうですか。――そう、それはいうはずがありませんね、始めて会ったあなたに。いう必要がないんだから」//「亡くなった友人の墓へ行きました」と言っても不自然ではない。後出のkと先生の関係
 

「こころ」ノート2の1

 投稿者:  投稿日:2001年 1月16日(火)02時06分8秒
    日本近代文学大系27巻43ページ//扉絵の意味。

3 私はその人を常に先生と呼んでいた。//先生は確か思想家だったが・・

3 私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。//私のこの時の年齢。

4 「暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書を受け取ったので、」//この友達は以後登場しないがどういう関係なのだろうか?何か怪しいといえば怪しい。

8 「私がすぐ先生を見付け出したのは、先生が一人の西洋人を伴れていたからである。」//この西洋人も怪しい。

8 その西洋人の優れて白い皮膚の色が、掛茶屋へ入るや否や、すぐ私の注意を惹いた。//たしかに目立つと思うが・・ 

9 猿股一つで済まして皆なの前に立っているこの西洋人がいかにも珍しく見えた。//やけに日本に馴染んだ西洋人。

10 「一言二言何かいった。その日本人は砂の上に落ちた手拭を拾い上げているところであったが、」//誰かが言っていたが、先生の動作は何か身体的に中途半端な、意識の劣等性を感じさせる所が多い。

11 「どうもどこかで見た事のある顔のように思われてならなかった。しかしどうしてもいつどこで会った人か想い出せずにしまった。」//一体何処で会ったというのか?普通にはすこし考えればすぐわかることだ。何か具体的な接点があるようなことはないか? <秘密クラブ?>

12 「すると先生は昨日と違って、一種の弧線を描いて、妙な方向から岸の方へ帰り始めた。」//どうして先生はこんな奇妙な行動をとるのか?先生は私を特別に意識している?

14 「私はすぐ腰掛の下へ首と手を突ッ込んで眼鏡を拾い出した。先生は有難うといって、それを私の手から受け取った。」//これは橋本治の解釈を採りたい。

14「私は自由と歓喜に充ちた筋肉を動かして海の中で躍り狂った。」//同上

14 「先生はまたぱたりと手足の運動を已めて仰向けになったまま浪の上に寝た。私もその真似をした。」//これは先で言った奇妙な「体勢」でもないが、やはり奇妙と言えば奇妙だろう。

15 「比較的強い体質をもった私は、もっと海の中で遊んでいたかった。」//橋本・同上

15~ 先生と掛茶屋で出会った時、先生は突然私に向かって、「君はまだ大分長くここにいるつもりですか」と聞いた。考えのない私はこういう問いに答えるだけの用意を頭の中に蓄えていなかった。それで「どうだか分りません」と答えた。しかしにやにや笑っている先生の顔を見た時、私は急に極りが悪くなった。//

16 「そこに住んでいる人の先生の家族でない事も解った。」//先生は奥さんを家に残して鎌倉へ遊び?に来ている。

17 日本人にさえあまり交際をもたないのに、そういう外国人と近付きになったのは不思議だといったりした。//たしかに不思議だ。

17 「私は最後に先生に向かって、どこかで先生を見たように思うけれども、どうしても思い出せないといった。若い私はその時暗に相手も私と同じような感じを持っていはしまいかと疑った。そうして腹の中で先生の返事を予期してかかった。ところが先生はしばらく沈吟したあとで、「どうも君の顔には見覚えがありませんね。人違いじゃないですか」といったので私は変に一種の失望を感じた。」//私も私だが先生もこんなところで「沈吟」する必要はないのではないか?やはり接点には心当たりがあるのではないか。
 

遠藤周作著『深い河』ノート1 文学以前のこと1 つづき

 投稿者:  投稿日:2001年 1月 3日(水)02時00分27秒
  遠藤周作著『深い河』ノート1 文学以前のこと1
俳句はたしか五七五だけれどもこの三句(?)の音の数(?)を数えると
    真実を(5)告げず(3)、 今日も病舍をたち去りぬ。(12)
      慄然として目ざめ(10)、 妻なき余生を思う(11)
      静脈の(5)うき出たる腕の(8)あまりに細し(7)
(正確な数え方も知らないのだが・・)、どうみてもこれはおかしい。
つまりこの三句(?)は俳句ではないだろう。一体これは何なんだろう。
どうしてこんな事がまともな(やはりまともなんだろう)小説に起きるのだろう。
不思議だ、ちょっと私の理解を越えている。
 

「こころ」ノート15

 投稿者:  投稿日:2000年12月29日(金)00時04分1秒
  その時妻はKの墓を撫でてみて立派だと評していました。//これはもうどうしょうもない。//

私はただ妻の記憶に暗黒な一点を印するに忍びなかったから打ち明けなかったのです。純白なものに一雫の印気でも容赦なく振り掛けるのは、私にとって大変な苦痛だったのだと解釈して下さい。//あくまで「妻の記憶に」である。記憶と実際は違う。

自分自身さえ頼りにする事のできない私は、妻の顔を見て思わず涙ぐみました。そうして妻を不幸な女だと思いました。また不幸な女だと口へ出してもいいました。妻はなぜだと聞きます。妻には私の意味が解らないのです。私もそれを説明してやる事ができないのです。妻は泣きました。//

妻はある時、男の心と女の心とはどうしてもぴたりと一つになれないものだろうかといいました。私はただ若い時ならなれるだろうと曖昧な返事をしておきました。妻は自分の過去を振り返って眺めているようでしたが、やがて微かな溜息を洩らしました。//

自分でよく知っているくせにといいます。私はまたぐたりとなります。//

妻は笑って取り合いませんでしたが、何を思ったものか、突然私に、では殉死でもしたらよかろうと調戯いました。//「調戯い」が過ぎる。

私はそういう人に取って、生きていた三十五年が苦しいか、また刀を腹へ突き立てた一刹那が苦しいか、どっちが苦しいだろうと考えました。//先生も35歳くらいだ。

私は私のできる限りこの不可思議な私というものを、あなたに解らせるように、今までの叙述で己れを尽したつもりです。//!!??

妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたいのが私の唯一の希望なのですから、//どうして「なるべく純白」になのか。
――――――――――――――
いちおう最後まで来たのでこれをあと10回ほど繰り返してみたい。
 

「こころ」ノート14

 投稿者:  投稿日:2000年12月27日(水)23時14分43秒
  「奥さん、Kは自殺しました」と私がまたいいました。//

しかしその顔には驚きと怖れとが、彫り付けられたように、硬く筋肉を攫んでいました。//奥さんは単純に「自殺」だと思ったのか。

奥さんはそうした手続の済むまで、誰もKの部屋へは入れませんでした。//

お嬢さんは私には何ともいいません。//

若い美しい人に恐ろしいものを見せると、折角の美しさが、そのために破壊されてしまいそうで私は怖かったのです。私の恐ろしさが私の髪の毛の末端まで来た時ですら、私はその考えを度外に置いて行動する事はできませんでした。私には綺麗な花を罪もないのに妄りに鞭うつと同じような不快がそのうちに籠っていたのです。//

Kにはそこが大変気に入っていたのです。それで私は笑談半分に、そんなに好きなら死んだらここへ埋めてやろうと約束した覚えがあるのです。//悪い冗談だが。

奥さんもお嬢さんも、国から出て来たKの父兄も、通知を出した知り合いも、彼とは何の縁故もない新聞記者までも、必ず同様の質問を私に掛けない事はなかったのです。//とのかくKの死因をみんな探った。

私の答えは誰に対しても同じでした。私はただ彼の私宛で書き残した手紙を繰り返すだけで、外に一口も附け加える事はしませんでした。//

。私はその友人に外に何とか書いたのはないかと聞きました。友人は自分の眼に着いたのは、ただその二種ぎりだと答えました。//これは気にし過ぎではないか。

奥さんもお嬢さんも前の所にいるのを厭がりますし、//いやに薄情だ。
 

「こころ」ノート13

 投稿者:  投稿日:2000年12月26日(火)23時47分13秒
 
見ると、間の襖が二尺ばかり開いて、そこにKの黒い影が立っています。そうして彼の室には宵の通りまだ燈火が点いているのです。急に世界の変った私は、少しの間口を利く事もできずに、ぼうっとして、その光景を眺めていました。//

私はただKがお嬢さんに対して進んで行くという意味にその言葉を解釈しました。果断に富んだ彼の性格が、恋の方面に発揮されるのがすなわち彼の覚悟だろうと一図に思い込んでしまったのです。//この遺書は全体に先生の自己正当化のフィクションとも思われる。

奥さんは「大丈夫です。本人が不承知の所へ、私があの子をやるはずがありませんから」といいました。//当然「私」について親子の話はあったのだろう。

いつも東枕で寝る私が、その晩に限って、偶然西枕に床を敷いたのも、何かの因縁かも知れません。//因縁話を持ち出している。

手紙の内容は簡単でした。そうしてむしろ抽象的でした。自分は薄志弱行で到底行先の望みがないから、自殺するというだけなのです。それから今まで私に世話になった礼が、ごくあっさりとした文句でその後に付け加えてありました。世話ついでに死後の片付方も頼みたいという言葉もありました。奥さんに迷惑を掛けて済まんから宜しく詫をしてくれという句もありました。国元へは私から知らせてもらいたいという依頼もありました。//Kの遺言

最後に墨の余りで書き添えたらしく見える、もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろうという意味の文句でした。//どうして。

私はわざとそれを皆なの眼に着くように、元の通り机の上に置きました。//どうしてこんな細工を私はするのか。

そうして八畳の中をぐるぐる廻り始めました。私の頭は無意味でも当分そうして動いていろと私に命令するのです。私はどうかしなければならないと思いました。同時にもうどうする事もできないのだと思いました。座敷の中をぐるぐる廻らなければいられなくなったのです。檻の中へ入れられた熊のような態度で。//こんなことをしている場合じゃないが。
 

「こころ」ノート12

 投稿者:  投稿日:2000年12月25日(月)23時30分40秒
 
その時分の束髪は今と違って廂が出ていないのです、そうして頭の真中に蛇のようにぐるぐる巻きつけてあったものです。//「蛇」

しかし食事の時、またお嬢さんに向って、同じ問いを掛けたくなりました。するとお嬢さんは私の嫌いな例の笑い方をするのです。そうしてどこへ行ったか中ててみろとしまいにいうのです。//ここまで言えば偶然に会ったのだろうが。

お嬢さんの態度になると、知ってわざとやるのか、知らないで無邪気にやるのか、そこの区別がちよっと判然しない点がありました。//お嬢さんの父のこと。日露戦争で戦死。

はたしてお嬢さんが私よりもKに心を傾けているならば、この恋は口へいい出す価値のないものと私は決心していたのです。恥を掻かせられるのが辛いなどというのとは少し訳が違います。こっちでいくら思っても、向うが内心他の人に愛の眼を注いでいるならば、私はそんな女といっしょになるのは厭なのです。//


つまり私は極めて高尚な愛の理論家だったのです。同時にもっとも迂遠な愛の実際家だったのです。//

私は苦しくって堪りませんでした。おそらくその苦しさは、大きな広告のように、私の顔の上に判然りした字で貼り付けられてあったろうと私は思うのです。いくらKでもそこに気の付かないはずはないのですが、彼はまた彼で、自分の事に一切を集中しているから、私の表情などに注意する暇がなかったのでしょう//Kは鈍感なのか

。Kはその上半身を机の上に折り曲げるようにして、彼の顔を私に近付けました。ご承知の通り図書館では他の人の邪魔になるような大きな声で話をする訳にゆかないのですから、Kのこの所作は誰でもやる普通の事なのですが、私はその時に限って、一種変な心持がしました。//

狼が隙を見て羊の咽喉笛へ食い付くように。//

 

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