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衆愚政治と多数決(3)

 投稿者:斉藤真一  投稿日:2001年 5月 5日(土)23時17分16秒
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  学者たちは「多数決が正しい」「いや、少数意見が正しい」といって、それぞれが自説に好都合な歴史データを寄せ集めて宣伝し合うが、彼らの学術論文はいつも徒労に終わる。なぜなら、時代を超えて国民に強制するべき「正しい採決方法」など、歴史上の何処にもないし、必要でもないからである。

誰かが「橋を架けよう」と言い出した時、みんなの選択肢は「とりあえず見送る」か「とりあえず審議する」か、どちらかしかない。審議に加わる人々がどんどん増えて、賛成だ、反対だと盛り上がってくると、やがて「橋を架けるか架けないか、採決しよう」となる。そして、みんなが納得できる採決方法は「とりあえず多数決しかない」ことに気付く。

問題はここからである。「全員一致」でいくか、「3分の2」でいくか、「過半数」でいくか。

「全員一致」は採決までの道のりが難儀である。多数の人々が少数者のエゴに振り回されて、いつまでたっても採決できない。苦労を重ねた末に、ようやく全員一致で可決なり否決なり結論が出て「めでたしめでたし」となる。反面、ずうっと後になってその決議が現実にそぐわなくなった時、「全員納得づくで決めた」という重たい事実が足枷(あしかせ)になって、改革をいつまでもズルズルと怠(おこた)らせる。

「3分の2」も、程度の違いはあるが、採決までの道のりが遠く、また採決後の改革を怠(おこた)らせる。当代で決定した浅知恵を後代にまで持ち越して呪縛することになる。憲法が良い例である。

有史以来、宇宙は拡散し収縮しまた拡散する。万物は流転し、往く川の流れは絶えずして常に元の水に在らざるなり。人の「意志(will)」「知識(knowledge)」も、それによって「とりあえず構築する合意(consensus)」も、日々に脱皮を繰り返しながら進化するのであるからして、必ずや他日の改革を視野に入れておかねばならない。

「過半数」は採決に至る過程を短くするし、また、採決後の改革も柔軟に許容する。それゆえ、国会において法律を決する場合も「過半数」がベストである。

確かに、今年367対365で可決した法律を、来年2人が心変わりして否決し、再来年また別の2人が考え直して可決、ということになれば収拾がつかない、ということはあろう。だからこそ、すべて法律は有効期限付きの時限立法にしなければならない。憲法も条約も例外ではない。

有効期限が過ぎれば、たった2人の力でどんな法律でも改革することができる。それゆえ、代議士諸君はあらゆる法律について、利害を超え、保身を超え、党利を超えて、おのれの意志を明確にし、合意を蓄積していく努力をせざるを得ない。「過半数」は代議士諸君一人一人に日常弛(たゆ)みない合意交換活動を強制する。ここにこそ「過半数の真髄」があるのだ。
 

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