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民業と政府と国民と国家(1)

 投稿者:斉藤真一  投稿日:2001年 8月 4日(土)15時47分48秒
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  その昔、人が地上に住み着いた頃、議会はなく、裁判所はなく、役所はなく、政府はなく、それゆえ、税金もなかった。税金に寄生する議員も裁判官も役人もいなかった。

漁師は魚をとり、狩人は鳥や獣を追い、農夫は畑を耕し、牧童は羊を飼い、樵(きこり)は木を切り、大工は家を作り、鍛冶屋(かじや)は鉄を打ち、医者は患者を治し、商人は物やサービスを交換した。人はみな生業(なりわい)を持ち、体を張って1日の糧(かて)を稼ぎ、家族を養った。親は時々転んだが、すぐまた大地に足を踏みしめて立とうとした。子どもはそれを見て育った。

人はみな、おのれの生活はおのれが賄(まかな)うものと覚悟して生きた。生業者たちはそれぞれ自立して、自然に発生する需要に応じて互いに発注と受注を交わしていた。納税という概念はなく、特定の組織に税金を納めた後おもむろに分配する制度もなく、それゆえ分配受注に群がる業者もなかった。小規模ながら「自由経済市場」はそれなりに安定し、成長していた。

そのうち人口が増えてくると、盗賊を取り締まれ、外敵を叩け、水火震災に備えろ、田畑に水を引け、道を作れ、橋をかけろ、通貨を統一しろ、法律を作れ等の「公共需要」が発生した。

そこで生業者たちは稼ぎに応じて税金を拠出し、議員と裁判官と役人を雇用して、公共需要を処理させることにした。議員には立法を、裁判官には司法を、役人には行政を担当させることにした。

生業者たちは、彼らの仕事を「公務」、彼らの身分を「公務員」、彼らの組織を「政府」と名付けた。そして彼らと区別するために、自らの仕事を「商売」、自らの身分を「民業者」、自らの組織を「民業」と名付けた。

民業は議員に命じて法律を作らせて、その法律に強制力を持たせて、自らもそれに従うことにした。そして、強制力を承諾する人々を「国民」と名付け、強制力の及ぶ領域を「国家」と名付けた。

かくして、民業は「国家のオーナー」として君臨し、政府を使役して国家の運営に従事せしめることとなった。政府は民業の「従属機関」であった。
 

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