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第2部 政府が民業を侵略する(2)

 投稿者:斉藤真一  投稿日:2001年 1月 2日(火)00時41分24秒
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   政府と民業の地位が逆転した事情は概ね以上のとおりだが、前節で触れたように、政府は一度も「公務」の領域である公共需要の境界を見定めた経験がない。それゆえ政府はおのれの分際を知らぬまま、ズルズルと民間需要をも攻略して手広く「商売」を展開することになる。
 
 証券業、金融業、保険業、製造業、通信業はじめ、電力、石油、ガス、運輸、輸送、道路、建築、不動産、観光、ギャンブル等あらゆる法人に「出資」「投資」して「配当」を稼ぎ、「融資」「預金」して「利息」を稼ぐようになる。これらの原資の大半は民業から徴収する「税金」。他の一部は貯金・年金・保険金名目で国民から調達する「預かり金」。もう一部は国債・地方債等のカラ手形を民業に押し付けて調達する「借金」。さらには競馬・競輪・競艇・オートレース・宝くじ・サッカーくじ等の博打(ばくち)から徴収する「上納金」である。

 そこには「公共需要」と「民間需要」の見境もない。もともと民業の縄張りである自由経済市場を手当たり次第侵略して資金をかき集めた後、再び市場に投入して利ざやを稼ぐ。集めては投入、また集めては投入をなりふり構わず繰り返すうちに、「公務」の領域がどんどん拡大していった。

 第二次世界大戦で崩壊した日本経済を立て直すために、政府は「基幹産業を育成し、社会資本を整備する」という名目を掲げて次々と国策企業を強化した。都合のよいことに、わが国には公務資本の調達についても使途についても、これを規制する法律がない。そこで政府はおのれの任務の境界を知らぬまま民間需要市場に突入した。「戦争」の次の標的は「商売」というわけだ。

 まず、燃料需要に応えるために炭鉱を、電力需要に応えるために電力会社を、鉄鋼需要に応えるために製鉄所を強化した。輸送需要には国鉄・造船所・航空会社、交通需要には道路公団、住宅需要には住宅公団、通信需要には電電公社・郵便局、金融需要には銀行・金庫・信金、食糧需要には農協を強化した。さらに、教育需要には学校・大学、医療需要には病院、旅行需要には交通公社、たばこ需要には専売公社、娯楽需要には前述のギャンブルといった具合である。

 このように並べ立ててみると、「公共需要」の網をかぶせることによって、国民生活のどんな需要も、容易に政府の「商売」のネタに化けてしまうことがわかるだろう。政府は際限もなく仕事のネタを見つけ出しては次々と税金を投入して自由経済市場に拠点を作り、人脈を配置した。税金が足りなければ国債や地方債を発行して借金を積み上げてそのツケを国民に回した。政府は「国民のニーズ」を口実にして、実はおのれが食べていくための仕事を増やし続けた。

 政府が胸を張って「国民のニーズのために昨年100兆円使いました」というとき、そのうち25兆円は給料としておのれが頂戴したという点に注目しておこう。あと25兆円はおのれの借金の分割払いと金利の支払いに使ったということも記憶しておこう。さらに25兆円は新たに振り出したカラ手形である。そうすると残り25兆円の行政サービスを民業者が受けたかというと、そうではなく、公務員自身もちゃっかり民業者の横に並んで「国民」としてサービスを受けたのである。

 公務員は誰でも「自分たちは利害を超えて国民のために仕事をしている」と思っているはずだが、実情は違う。

 「仕事がなければ予算を削られる。だから絶えず新しい仕事のネタを掘り起こさねばならない。幸い、国民は意地汚いから、あれもやって欲しい、これもやって欲しいという需要は巷に溢れている」――こうして需要がありさえすれば、真っ先に「つば」をつけて公務に取り込んでしまう。民業は常に後塵を拝してやせ細るばかりだ。これでは足腰の強い民業が育つわけがない。「民業を育成する」行為が実は「民業を侵略する」行為であることを、政府も民業もしっかり認識しなければならない。  

 そこで、政府の不良行為を二点に絞って指摘しておこう。

 第一に、公務目的で集めた資金で営利行為を続けてきたという問題。「公務のために使います」と吹聴して国民から金をかき集めておきながら、実は商売(出資・投資・融資・預金)につぎ込んできたという点において「背任行為」である。第二に、営利目的で商売を行う民業の顧客を奪い続けてきたという問題。民業の縄張りを侵してきた、あるいは民業の成長を邪魔してきたという点において「営業妨害行為」である。
 

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