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第1部 政府と民業の境界線(2)

 投稿者:斉藤真一  投稿日:2001年 1月 2日(火)00時48分53秒
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   生業者たちは、彼らの仕事を「公務」、彼らの身分を「公務員」、彼らの組織を「政府」と名付けた。そして彼らと区別するために、自らの仕事を「商売」、自らの身分を「民業者」、自らの組織を「民業」と名付けた。また、需要を便宜上「公共需要」と「民間需要」という概念で区分し、前者の事業発注権を政府に与えることにした。

 民業は議員に命じて法律を作らせて、その法律に強制力を持たせて、自らもそれに従うことにした。そして、強制力を承諾する人々を「国民」と名付け、強制力の及ぶ領域を「国家」と名付けた。かくして、民業は国家のオーナーとして君臨し、政府を使役して国家の運営に従事せしめることとなった。政府は民業の従属機関であった。

 以上は、政府誕生のモデルケースを一筆啓上したスケッチなので、これと一々の歴史事実を照合する価値はない。しかしながら、「商売」と「公務」、「民業者」と「公務員」、「民業」と「政府」、「民間需要」と「公共需要」、それに「国民」と「国家」という重要ファクターの本質を明快に位置付けているので、誰が見ても国家の構図を一目で把握できる利点はあろう。

 これらのファクターで眺めれば現代国家の構図もわかりやすい。たとえば、国民と国家に対して誰が最終責任をとるか。それは議員でも裁判官でも役人でも政府でもない。税金に寄生する公務員に責任をとる資格はない。かといって「国民」でもない。乳幼児や生徒・学生や専業主婦や老人や無職者も国民ではあるが、責任をとれといわれてもとりようがない。結局、商売に従事して所得を稼ぎ出す民業者が最終責任をとることがわかる。

 主人は家族を養うゆえに一家のオーナーであり、民業は国民生活を賄うゆえに国家のオーナーである。首相や政府が倒れても直ぐに補充できるが、民業が倒れたら国家と国民生活が破綻することからも、民業が国家のオーナーであることは明白である。

 そこで、民業と政府両者の間に境界線を引いてそれぞれの役割を確認しておこう。

 民業の目的=経済活動に従事して国民生活と政府財政を賄う
 政府の目的=公務に従事して国民生活の安定を図る
 民業の任務=商売
 政府の任務=公務
 民業の領域=自由経済市場(民間需要)
 政府の領域=立法・司法・行政(公共需要)

 国家生存の唯一基盤は民業にあるが、その民業生存の唯一基盤は自由経済市場にある。民業はここで商売に従事して所得を稼ぎ出して国民生活を賄うとともに、税金を拠出して政府の財政を賄う。政府は預かった税金の中からおのれの食い扶持を頂戴して、残りを公務に振り当てる。これが政府と民業の基本的な関係である。

 民業は商売を行う義務と権利がある。また、民業は政府に公務を行う義務と権利を授けている。ここから、「民業は政府に商売を行う義務も権利も授けていない」という事実が浮かび上がってくる。国家のオーナーたる民業が従属機関たる政府に商売しろと命じたことは一度もない。これが重要なポイントである。
 

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