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第1部 政府と民業の境界線(1)

 投稿者:斉藤真一  投稿日:2001年 1月 2日(火)00時50分30秒
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   日本は法治国家である。それゆえ政府の仕事はすべて法律に基いて行っているはずである。ところが実は、政府が何をするべきか、仕事の範囲はどこからどこまでか、何をしてはならないか、憲法にも行政法にも財政法にも規定がない。政府の目的や任務や領域を定めていないのだ。このため政府はおのれの任務の境界を知らぬまま商売に手を出して民業の縄張りを侵略する。民業もまた被害の大きさを知らぬまま黙々と商売に励んで納税する。なんとも、お粗末な構図である。

 法律に明文の規定がないとはいえ、政府の仕事が「公務」であることに変わりはない。したがって、政府が公務を逸脱して「商売」していれば、それは越権行為として禁止しなければならない。そこで、公務の領域がどこからどこまでか本稿で明らかにするが、その前に政府誕生のモデルケースを一筆スケッチしておこう。

 その昔、人が地上に住み着いた頃、議会はなく、裁判所はなく、役所はなく、政府はなく、それゆえ、税金もなかった。税金に寄生する議員も裁判官も役人もいなかった。漁師は魚をとり、狩人は鳥や獣を追い、農夫は畑を耕し、牧童は羊を飼い、樵(きこり)は木を切り、大工は家を作り、鍛冶屋(かじや)は鉄を打ち、医者は患者を治し、商人は物やサービスを交換した。

 人はみな生業(なりわい)を持ち、体を張って1日の糧(かて)を稼ぎ、家族を養った。親は時々転んだが、すぐまた大地に足を踏みしめて立とうとした。子どもはそれを見て育った。人はみな、おのれの生活はおのれが賄(まかな)うものと覚悟して生きた。

 生業者たちはそれぞれ自立して、自然に発生する需要に応じて互いに発注と受注を交わしていた。納税という概念はなく、特定の組織に税金を納めた後おもむろに分配する制度もなく、それゆえ分配受注に群がる業者もなかった。小規模ながら自由経済市場はそれなりに安定し、成長していた。

 そのうち人口が増えてくると、盗賊を取り締まれ、外敵を叩け、水火震災に備えろ、田畑に水を引け、道を作れ、橋をかけろ、通貨を統一しろ、法律を作れ等の「公共需要」が発生した。そこで生業者たちは稼ぎに応じて税金を拠出し、議員と裁判官と役人を雇用して、公共需要を処理させることにした。議員には立法を、裁判官には司法を、役人には行政を担当させることにした。
 

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